2013/07/26

最初で最後の公開授業

7がつ 25にち もくようび


グアテマラでの2年間の活動の中で、最初で、最後となる公開授業を実施しました。

 
授業者はカウンターパートのフローリー。
 
7月に入ってからはほぼ毎日フローリーの教室へ通い、算数の授業の補助をしてきました。
 
彼女がこのクラスの担任になったのは5月に入ってから。
 
まだ2か月も経っていない時期だったのに、子どもたちはしっかりフローリーの言うことを聞き、
 
落ち着いて授業ができる状態になっていました。
 
 
フローリーは頭が良くて、人間性も素晴らしい人だということは前からわかっていたけど、
 
教師として子どもたちに接する彼女の姿から、この1ヵ月私はたくさんのことを教えてもらいました。
 
 
彼女の授業を他の先生にもぜひ、見てほしい、と思いました。
 
 
日本では保護者の授業参観や、先生同士の研究授業など頻繁に実施されているけれど、
 
グアテマラでは当たり前じゃありません。
 
日本だって当たり前に行われていることであっても、人前で自分の授業を見せるということはとても緊張すること。
 
他の先生に色々と言われると思うと不安だし、こわい。
 
日本でもそうなのに、それが当たり前じゃないグアテマラでやるということは、
本当にいいことなのか、ずっとひっかかっていたことではありました。
 
だから、フローリーがやりたくない、と言えば、無理にお願いしようとは思っていませんでした。
 
でも、
フローリーは 
 
「うん、やろう。」
「授業を見せることで、私の授業の良い点や改善点を他の先生に言ってもらうことで学ぶことができるから。不安なこともあるけどやってみる。」
 
本当に、彼女の向上心、仕事に対する意欲は私も見習わないといけないと毎回思わされます。
 
 
しかしながら、学校の行事や委員会の仕事、大学の勉強や子どもたちの世話などでフローリーは忙しすぎて、
学校へ通ってもほとんどゆっくり話す時間なしの日々。
 
そんな中、話し合いをするために午後の時間を割いてくれて、一緒に準備を進めることができました。
 
 
 
せっかくの公開授業。パイロット校の先生にも参加してほしい、ということで、
 
4校それぞれ校長先生と4年生の担任の先生を招待。
 
あとは、フローリーの学校の先生たちと教育実習生。合計約20名。
 
 
 
カンテル市の教育長は多忙な中、一時間だけ時間を割いてくれて、フローリーの授業を見てくれました。
 
 
授業は4年生の「帯分数と仮分数」。
 
 
分数はそもそも、先生たちが苦手とするテーマのひとつ。
 
でも、これまでの研修会の積み重ねやフローリーの努力もあり、
 
授業ではわかりやすく、子どもたちに分数を教えていました。
 
 
もちろん教具は使用して説明するけど、子どもたちがちょっと理解できていないかな、と思ったら、
 
子どもたちがイメージしやすい身近な話題を出して、子どもたちが理解できるまでじっくり教える。
 
 
分数の前はわり算を勉強していたこの4年生の子どもたち。
 
4年生になったのにもかかわらず、3年生で習った内容がほとんど定着しておらず、
 
わり算は3年生の復習からやり直して毎日奮闘の日々。
 
フローリーが担当になってから、子どもたちの計算の力は相当ついてきたんじゃないかと思う。
 
 
公開授業を行うにあたって、一緒に簡単な指導案と板書計画を立ててみました。
 
これは公開授業の際の板書。
 
 
 
板書計画なんて立てることがまれ。
 
指導案も板書も今回は「考えてみる」ということが大切なことなんだよ、と気が付いてくれたらそれで良し!と考えていました。
 
 
 
公開授業のあと、フローリーから授業をした感想を言ってもらい、
 
参加した先生たちと一緒に授業検討会を開始。
 
グループに分かれて、付箋に授業の良かった点と、改善点をかいてもらい、
 
一枚の模造紙にまとめていってもらいました。
 
 
 
やる前は、このグループでの話し合いがどうなるのか、全く想像できず、
 
全然話をしてくれなかったらどうしようかひやひやしていました。
 
でも、その心配の必要はなく、皆が話し合いに参加して、授業について意見を言い合っていました。
 
 
その姿をみて、感動。
 
 
参加した先生方の授業に対する意欲を感じることができました。
 
 
グループでの話し合いの後は、グループ発表。
 
それぞれグループで話し合ったことをみんなの前で発表してもらいました。
 
 

 
 
授業の良かった点、改善点を話し合う中で、授業の行うにあたって何が大切なのか改めて考えることができたこの時間。
 
最初にまず自分の意見を話して、その後他の人から出た意見に対して自分の考えを伝えながら、出た意見をきれいにまとめていってくれました。
 
 
素晴らしいです。
 
 
グループ発表の後はフローリーからコメント。
 
いつもどんなことに気を付けて授業をしているのか、今日の授業はどうだったか、
 
皆から出た意見に対して、自分の思いを伝えていました。
 
良い部分も改善すべきところも言い訳せず、しっかり受け止めていたフローリーの姿勢は、
 
私も自分がもっと学んで、より良くなっていくために見習わないといけないと思わされました。
 
 
 
そして、今回の特別ゲスト、日本人学校の校長先生。
 
授業と授業検討会に関してコメントをいただきました。
 
 
 
私がなんとかスペイン語に訳して伝えていき、先生たちは熱心に聞きいってくれました。
 
日本の校長先生から意見をもらうことなんて、これが初めて。
 
カンテルの先生方にとって、とても貴重な経験だったのではないかと思う。
 
 
そして、校長先生から頑張ったフローリーへプレゼント。日本人学校への招待状。
 
 
 
とっても喜んでくれました。
 
あとでこっそり私に、「プレゼントは日本への航空券かと思ったわ」と笑いながら言ってきました。
 
あぁ、ほんとに日本へ連れて行ってあげたい。。。
 
 
 
最後は、私からフローリーと参加してくれた先生方に感謝の気持ちを込めて
 
ディプロマを渡しました。
 
 
ディプロマは学校での仕事とは別にこのような研修会に参加した場合その証明として渡すもので、
 
これがあると、昇給につながったりする重要なものなのです。
 
 
今回の公開授業を実施したフローリーには、実施したということを誇りに思ってほしい。
 
参加した先生方にも、参加してよかった、次の授業に活かそう、と思ってくれたら嬉しい。
 
カンテルでの最初の公開授業。
 
どうか、みんなの心に残るものであってほしい。そんな願いをこめて。
 
 
今日この一日は私にとって忘れられない特別な日となりました。
 
 
 
この1ヵ月、準備をする中で、
 
「この活動は私の独りよがりなんじゃないか」と思うことが多々あった。
 
一生懸命授業をやりたいと思うからこそ、毎日忙しい日々を送るフローリー。
 
公開授業をすることでさらに忙しくさせてしまう。
 
本当に彼女にとって意味のある活動になるのか。
 
私がやりたいから、優しい彼女は協力しようとしてくれるだけなんじゃないか、と。
 
 
でも、乗りかかった船、なるべく負担はかけないよう、
公開授業をやってよかった!と思ってもらえるよう、私が頑張ろうと思い、今日まで準備をしてきました。
 
慣れない指導案も、一緒に考えて、教具も一緒に作りながら授業の構想を練っていきました。
 
当日、緊張しながらもいつも通りの素敵な授業をしてくれたフローリー。
 
わかりやすくて、子どもたちへの愛情を感じる彼女の教え方は、私もお手本としたいくらいです。
 
 
でも、授業以外の準備はフローリーと一緒にやるわけにはいかない。
 
そんな中、この1ヵ月、本当に親身になって相談に乗ってくださった校長先生。
 
校長先生の支援がなければ、私一人では成功させることはできなかった。
 
本当に基本的なことを質問しても、丁寧に回答してくださり、
 
メールの最後には、いつも私を励ます言葉をくださった。
 
その言葉になんど救われたことか。
 
一つのことですぐ頭がいっぱいになってしまう私は、校長先生のメールでいつも大切なことに気づかされ、誰のためにやるのか、何のためにやるのか、見失わずに最後まで準備を頑張ることができた。
 
感謝しても感謝してもしきれないほど。
 
 
協力隊の活動は、すぐに成果が見えないもの。
 
もともと成果なんて期待されてはいないかもしれない。
 
それでも、なにかしたい、なにか現地の人のためになる活動をしたい、とこれまでやってきた。
 
 
私は公開授業をすることで、フローリーにもっと自信をもってもらいたかった。
 
先生たちにもフローリーの授業を見ることでなにか学んでほしい、そして話し合いを通して自分の授業を振り返りながら、良い授業とは何か改めて考えてほしかった。
 
些細なことでも、明日はこの点に気を付けて授業をしてみよう、今度はこういうことをしてみよう、というアイディアをどんどん膨らませてほしかった。
 
今回、先生たちの顔を見ていて、充実した時間を過ごせたのだと感じることができた。
 
それぞれに書いてもらった感想には、
 
「私たちがこれからもっと良い授業をしていくためにとても重要なことだと思った」
 
「参加できてよかった、これから今日学んだことを自分の教室で活かしていきたい」
 
などといった、公開授業と事後検討会で学んだことがたくさん書いてあり、
 
本当にやってよかった、と思えた。
 
 
フローリーも最後は笑顔を見せてくれて、
 
私が「ありがとう、一緒にこの活動ができて本当に嬉しかった」と言ったら、
 
「私もよ。ありがとう。公開授業をやってよかった。」と言ってくれました。
 
 
胸がいっぱいになりました。
 
 
終わってから、校長先生が、
 
私自身、この公開授業を通してたくさんのことを学ぶことができました。
 
実際ここまでできるなんて思っていなかったが、フローリー先生はしっかり授業ができていたし、
 
他の先生方も初めてなのに上手に話し合いができていた。
 
先生方の能力は決して低くない。
 
カンテルの先生が好きになりました。
 
と言ってくださいました。
 
 
そして、私にも、
 
大成功だったね。 この1ヵ月の準備でよくここまで頑張った。
 
人を育てることは「可能性を信じること。」 子どもも先生も一緒。
 
5年後10年後が楽しみだね。
 
今日頑張っていたあなたを見て感動で涙が出そうになりました。
 
感動をありがとう。
 
と言ってくださり、私は本当に嬉しくて泣いてしまいました。
 
 
本当に、本当に、心から感謝しています。
 
フローリー、ありがとう。
 
校長先生、ありがとうございました。
 
 
 
校長先生が最後のコメントで、私に内緒でこの研究会を「ともこ算数研究会」と呼びましょう、
 
と先生方に言ってくれました。
 
だから黒板の右上には先生が書いた「Tomoko Sansu Kenkyukai」という文字が。
 
私にも素敵なプレゼントをありがとうございました。
 
 
今はまだ何も変わらなかったとしても、先生方の心に何か残って、
 
5年後10年後、それが花開くときがきたなら、幸せだなぁと思う。
 
 
いつも、謙虚な気持ちを忘れないで、
 
いつも、学び続ける気持ちを忘れないで、
 
いつも、自分の心に正直に生きていこう。
 
 
私自身がこのグアテマラで学んだことを、私自身が活かしていこう。
 
 
 
 

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