2012/07/09

教訓

7がつ 9にち げつようび




グアテマラに来て一年。


スリも強盗も殺人も日常的におこる危険な国だからいつも気を付けるようにと言われてきた。


最初の頃は強盗にあったときすぐにお金を渡せるように「捨て金」と携帯を盗られたときのために「公衆電話用の小銭と連絡先を控えたメモ」を出かけるときはいつも携帯してた。


危険な場所にはいかない。夜も出歩かない。


最初の頃はとっても怖くて、いつも緊張して歩いてた。


だけど、いつからだろう。
慣れてきて、あまり注意しなくなった。


一年がたったけれど、これまで何も起こらなかった。
だから自分は大丈夫だって根拠のない自信をもってしまってた。


でもそれは起こってしまった。


6月30日、午後5時過ぎ。首都:グアテマラシティ


その日は雨が降っていていつもより人通りがくなっていた。他の隊員と夜ご飯を食べようと外に出て少し歩いていたとき、前から走ってきた車が急に止まって中から男が出てきた。


男は袋の中に手を入れて私たちに向かって「金を出せ」と言ってきた。


びっくりして、すぐに状況がつかめなくて、でも強盗だとわかった。


震えながら持っていたカバンから財布を取り出そうとすると、「全部よこせ」と言って私のカバンをひっぱった。




こういう状況になったら抵抗はするな。と言われてきていたから、そのまま手を放した。


男はすぐに車に乗り込んで去って行った。銃をもっていたのか、もっていなかったのかはわからない。


さっき通行人とすれ違ったばかり。すれ違った人たちはまだ近くを歩いていた。


辺りは何もなかったかのように静かで、違うのはさっきまで持っていたものが無くなったことと私の気持ち。


あぁ、これが強盗なんだな。こうやって盗られちゃうんだって。


震えて、怖くて、どうしたらいいかわからなかった。でも、はやく銀行のカードや携帯をとめなきゃいけないってことは頭に浮かんだ。


とっても動揺してたけど、以外にも冷静に状況を説明できた自分にびっくりした。




でもお金を全部盗られてしまったので、任地に帰るお金も新しく携帯を買うお金もなかった。
あのときは銀行のカードやお金を何も考えずにカバンに入れていたせいで、そのまま全部盗られてしまったから。。


移動するときはちゃんとわけて、体に身に付けて首都にあがってきたのに。
完全に油断していた。気が緩んでた。


ボランティア調整員の方がすぐかけつけてくれて、対応してくれてお金も貸してくれた。


任地に帰ってきてからは、強盗にあった時のことを思い出して、人に話す度涙がとまらなくなってた。ホームステイ先の家族とカウンターパートにはとっても迷惑をかけたと思う。
ずっと泣いてたから。


こういうことがあったと周りの人に話すと、驚いたことにほとんどの人が同じように強盗にあったことがあると私に話してきた。


身に付けていたピアスやネックレスをいきなりつかまれて盗られたり、銃で脅されたり、おいていた車のガラスを割られ中にあったものを盗られたり。。。


その時わかった。というか改めて気づいた。
ここは危ない国だったって。外国人だけじゃない、現地の人でさえ日常的に犯罪にあう国だったと。


強盗にあうことなんて、まれなことじゃない。むしろ外国人なら当たり前。
強盗にあったんだね、かわいそうに。だけど仕方ない。


そんなもん。


だからいつまでもくよくよしてちゃだめだって思った。


でも救いだったのはみんながかけてくれた言葉。


「強盗にあったのは災難だった。だけどなにもされなくて本当によかった。モノはいくらでもまた手に入れることができる。だけど朋子のかわりはどこにもいない。朋子が今こうして元気でいることだけで十分だよ」と。


それを聞いて、本当に何もされなくてよかったって思った。
誘拐されなかったし、傷つけられもしなかったし、殺されもしなかった。


モノは確かになくなってくやしいし、悲しい。
でも、もしモノが残ったとしても死んでしまったとしたら、そのモノたちは一体何の役に立つんだろう。


ある人は自分の子どもを誘拐されてしまったという。
家にはお金も、銀行のカードもなんでもあったのに、子どもを奪われてしまった。
子どものためにためていたお金、子どもがいなくなってしまったら何の役に立つの?


またある人は強盗に襲われて、持っていたものを全部よこせ、と言われた。
だけどどうしてもゆずれないものがあった。だから抵抗した。
それで殺されてしまった。
強盗は怖くなって何も盗らず逃げてしまった。
モノは残った。
でもその人は死んでしまった。
家族は言う。そんなもの残ってどうなるというのか。死んでしまってはもうなにもできない。全て意味のないものに変わってしまった。
その人が生きていれさえいれば、それでよかったのに。


人の命はとっても重い。かけがえのないもの。
だけどそれを奪うのはとっても簡単。
引き金をひけば、一瞬で奪えてしまうんだから。


悲しいけどそれが現実。


なんでそんなもの、みんな持ってんだろ。


一年たって、初めて本気で日本に帰りたいと思った。こんなとこいたくないって。


でも1週間たって、情緒不安定もなおってきて、今まで通りの状態に戻ってきた。


だからもう一年、また新たに気を引き締めて頑張ろうと思えるようになった。


これが全てじゃないから。グアテマラには素晴らしいものもたくさんあるから。
少なくとも、私の周りの人たちは心の優しい、とっても素敵な人たち。
それは大きな財産。


今回のことは、人生の教訓だと思って、盗られたものは高い授業料を払ったんだと思って、
これからもっと強く生きていかなきゃ。


強くなれーーー自分!!!